第3期修了式の授業は、陣内一真さんによる特別講演「映像に音楽をつけるお仕事」。
陣内一真さんは、日本で大ヒット中の「すずめの戸締まり」をPADWIMPSと共同で担当された映画音楽作曲家です。第46回日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞し、今注目を集めています。
幼少期にピアノやフルートをはじめ様々な楽器に興味を持ち、高校時代ワシントン州に留学そしてバークリー音楽大学を卒業されたという自己紹介からスタートし、事例を交えながら現在のお仕事について話してくださいました。
○映像音楽の役割
はじめに、映像に音楽が付くとはどういうことかについて同じ写真に四つの曲をつけて紹介。
1曲目 ピアノとチェロで、内面的なものを表現
2曲目 オーケストラで、関わりの表現
3曲目 電子音で、哀愁の表現
4曲目 編成が大きなオーケストラ
同じ写真でも、流れる音楽によってイメージが大きく違うことを体験し、映像音楽の役割に惹きつけられました。
○作品の意味
次に、作品としてのデザインはどうやってできていくかについてアニメ製作の流れを例示。
脚本、コンテ、レイアウト、原画・動画・色指定、撮影、編集、アフレコ、ダビング
の流れの中で、ダビングの段階で音楽納品。それまでに音楽の方向性を打ち出し、音楽メニュー曲の作曲や絵合わせによる作曲という、作品によっては1~2年もかかる大変な作業であることがわかりました。緻密な音楽づくりに、目から鱗状態!見事な職人技は圧巻でした。
○「すずめの戸締まり」
物語のあらすじ説明のあと、だんだん盛り上がっていくオープニング映像の紹介。
映像の中で何が起こっているか、カットごとのテンションの変化、危機感のあおりかた、
カメラワークのスピードなどの作り方、そして後半にもつながるような計画と、ここでも
驚きの連続でした。
ミミズが見えたとき太鼓と笛で希望を、シンセサイザーでうごめいている様子を、オーケストラで脅威や和や無国籍な感じを伝えるために、どのように組み立てていったのかをご説明くださいました。扉を閉めるとき、唱える時の鈴の音も記憶がよみがえる様子を表すドラマチックな音楽言語でした。
メインテーマ「ル、ル、ルルル・・・」のアレンジも素晴らしかったです。意図を持ってメロディーを生かしてアレンジしいろんなシーンに対応させる。ドラマをつくる技に感動しました。今までのアニメ作品の見方と違った視聴ができそうです。
PADWIMPSの野田洋次郎さんとの音楽づくりについて
「ゆずらないという姿勢ではなく、お互いに曲の引用をしていく。」
「作品がいい方がいい。そのために他の人の良さを生かしていく。」
という言葉が特に印象的でした。
アーティストは、自分の個性をぐいぐい出すというイメージでしたが、いい作品をつくるために他の人の良さを受け入れ生かしていこうとする姿勢に、陣内さんの心の広さ、人間的な魅力を感じました。
監督の思いをくみ取り、それに対応できる素晴らしい能力をお持ちの陣内さんの今後の活躍がとても楽しみです。
ジャングルシティ インタビュー記事 https://www.junglecity.com/people/hottalk/kazuma-jinnouchi/
映画『すずめの戸締まり』【行ってきますPV】https://youtu.be/8zGz4z3bdzg
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